2008年 02月 12日
扁平した台形の根元は、直径が六センチもあった。 緩やかに湾曲しながら次第次第に細まって、槍の穂先状に尖んがって行く先っぽまで、長さは四十五センチをほんの少し切るだけ。 ズシリと持ち重りがして、矯(た)めつ眇(すが)めつ眺めても、出てくる言葉は「すげ~な~」。 メカジキの吻、通称は角、生物学的には上顎なのだけど、とてもアゴとは思えない。 西表島には群生林があって、確か天然記念物指定がされている樹木だと記憶している。 根っ子を板状に隆起させて生える特徴があって、強風から親木の倒れるのを必死で守っているような景観を持つ大木、サキシマスオウ。 昔はこの板状に盛り上がった硬くて丈夫な根を切り出して、漁船の舵に用いたり、三寸下は地獄の底板(加敷)に利用していたのだという。 その丈夫で分厚いサキシマスオウの舵&底板を、簡単に突き刺してしまう強烈な吻を持つ魚だから、『カジキトオシ』、そして『カジキ』と呼ばれるようになったのだと。 「さもありなん」の力強さです。 何たって泳ぐスピード世界一、時速百キロを越える『バヨウカジキ』の仲間だから、この槍先で突進してきたら、サキシマスオウの舵どころか、鉄船の胴体だってと突き抜いちゃうだろう。 マグロ資源の調査船に乗り込んで、五ヶ月掛けてペルシャ湾口のドバイまで往復してきた若き女性調査員のお土産である。 「ハイ、これ、お土産よ」と手渡して呉れながら、「根元から先っぽの方まで左右二本、神経の管が通っているから、これを上手に腐らせないと何時まで経っても臭みが抜けないそうよ。上手に始末してね」と、但し書きが付いた。 つまり、獲りたてってことである。 決して貴重なものではない。 漁獲量は随分減り、沖縄を除けば突きん棒専用の漁船は見掛けることは難しくなったけれど、かつては外房一帯に突きん棒漁師が居て、無用のツノ(吻)はそこらにころがっていた。 いまでも沖縄辺りの漁港では手に入るものかも知れないけれど、「おかしな人だから、こんなものを喜んで呉れるかも知れない」と気に掛けてくれて、わざわざ「要らないなら頂戴」と、貰ってきて呉れた心根が嬉しい。 「こんどは一角獣の調査に向かって、是非あの三つ編み状をした角を貰ってきて呉れ」などと、冗句を飛ばして頂いたけれど、manbowはまさしく、こんな変なものが好きなのです。 船乗りはコイツの先っぽを切り取って縄を綯うためのスパイキーにしたりする。 それもいいけど、こんな立派なもの切り刻みたくはない。 つまり、「このまま飾りたい」と、そんな気持ちになります。 それよりも何よりも、彼女の五ヶ月間の調査航海のお話し。 「ジックリうかがいたい」と申し出て、楽しい約束がとれたこと、嬉しいんです!!
by molamola-manbow
| 2008-02-12 13:21
| ヨット
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