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2009年 02月 13日

  長 姉 

金の含有量日本一の鉱山を持つ菱刈町を吸収したついで。
郷里・北鹿児島の大口市が『伊佐市』と改名したのは去年の夏頃だったろうか。
『伊佐郡』の名は一帯の地名として前からあった。
市の特産物も『伊佐錦』、『伊佐美』、『伊佐大泉』の焼酎だから、前の名前よりいいのかもしれない。
その昔、我が家も伊佐郡大口町西本町里〇×号と言って、父親が書斎に使っていた離れと母屋の間は、屋根と欄干を持つ、かなり長い太鼓橋状の渡り廊下でつながっていた。
軽く腰を屈めれば、大きな大人でも楽々と潜り抜けられる高さ。
コノ橋桁に長姉(ちょうし)は額をぶつけて二度も気絶した。
悪さばかりするオイラを捕まえようと追い掛ける。
太鼓型の橋だから、桁の高さは潜る場所によって変わる。
熱中すると周りが見えなっちゃう長姉だったから、最初に潜った場所と次に潜り抜けた場所を変えたことに気付かない。
それでガツ~ン。
二度目にこれをやった時、父親にこっぴどい叱られ方をした。
「おねえちゃんに怪我させて、そんなに楽しいのか。もう一度同じことをやったらウチからは出てってもらう。ウチには入れん」
オイラを叱ったあと、長姉も正座させられたことを知っている。
「トシの離れたこども風情にからかわれて、二度も同じ過ちをおかすとは何ごとだ。もう少しオトナになれんのか
オイラ、小学校に上がっていただろうか・・・・・?

d0007653_18243881.jpg土間に作ったツバメの巣を狙い、青大将が梁を伝い始めたことがある。
悲鳴を挙げるとか、棒っ切れ探して追っ払うとか。
普通の女性ならこうするのだろうが、長姉は固唾を呑んで見守り続けた。
どんな結果に終わるのだろう、コチラの興味の方が全てに勝るのだ。
ウルサイ母ツバメの反撃に青大将は途中でドサッ。
目的を達せずに梁から落ちてツバメは事なきを得たのだけど、長姉の反応はこうなる。
「彼らに二度目はないのネ、もう一度試そうとはしなかった。残念そうな素振りも見せずに消えたワ」

我が家で唯一人、蛇を食った、蛙も食らった経験を持つのもコノ長姉。
「どのような味の肉なのか?」、食べられる機会を貰ったら、試さずにはおれない性格、物事への興味は尽きることがない。
マンションのベランダに土鳩が巣を作った。
覗くとタマゴがある。
「どんな味がするのかしら?」
で、食っちゃった。
アハハの姉貴です。

橋桁事件から間もなく、長姉は家を出て鹿児島市近郊の旧家に嫁いだ。
裏庭から階段を下りると清流が流れ、一晩籠を沈めて置くとバケツ一杯の藻屑蟹が入った。
呼び名こそ違え上海蟹と同類、べら棒に美味しい。
すぐ近くの八幡様には、空洞の中で宴会だって立派に開ける日本一の楠の巨木が聳える町、実家よりも遊びの環境は格段勝っていた。
「おねえちゃんについて行く」と言い募って両親を困らせた。

大柄な姉貴だと感じていたガキの時代の記憶と違い、小さく縮んだ可愛い顔は寝息を立てて横たわっていた。
「一度ぐらいは悪さをしただろうか・・・・・?」と自問してみる。
な~にも頭に浮かんでこないから、小さなオイラとも本気になって喧嘩してくれたのだろう。
「変なサプリメントを飲んでね、三十日掛けてこんなからだになっちゃったから、三十日掛けて治すの」
病院をたずねた時の言葉が最後となった。
「今日明日でもおかしくない」と言われて病院を引き払い、こどもたち、孫に囲まれた早朝に自宅で逝った。
最後までこどもの心を持ち続けた八十三歳、鳩のタマゴは盗んだけど行き先はきっと天国だ。
                                           
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by molamola-manbow | 2009-02-13 14:02 | カテゴリー外


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